第2集
- ひとの別れ話なんて聞くもんじゃないな。
- 電話口の前で散々泣かれた。
- こんな話、ってそのための話し相手でしょ。
- 心の底から話し合ったことある?
- それ、はたからすると恋人だよね。
- 今のは冗談。
- あの人の前だと、緊張の糸が切れるっていうか。
- それって臆病って気がする。
- たぶん、それは本気で好きになったことがないんだよ。
- なんか話したいことあったんじゃないの。
- なんでもないって、そんなことないでしょ。
- 意外とでかい部屋なんだね。
- パスタでもいい?
- あたしエビ大好きなんだ。
- そんなに飲んじゃって大丈夫?
- なんでそんな無茶すんの。
- あたし、惚れっぽいから。
- もう無いんじゃない、ぽちゃぽちゃしてるもん。
- もう寝ましょ。
- いまから出歩いてもいい?
- 麦茶のむ?
- 気にしなくていいよ。
- いやじゃないよ。
- 何時に出てくの?
- みんな勝手なもんよ。
- なんか馬鹿らしくなっちゃった。
- 私が慰めるなんて、柄にもないでしょ。
- ひとに慰められることなんて、めったにないけどね。
- 歳はひと回りくらい離れてたかな。
- 愛の喪失に、歳なんて関係ないよ。
- 恋とか愛とかって面倒じゃない?
- 感情に役に立つとか立たないとかあるの?
- 今日はね、いちにちじゅう破れ去った恋について考えてたよ。
- その失恋が薬となるか毒となるか。
- そんなこと未練がましく繰り返してさ。
- 自覚はしていても、不誠実な人間だと言われると応える。
- 遊び人と言われても悪い気はしない。
- 恋の到達点ってなんだと思う?
- ひとりになるのもいやで、とりあえず現状維持。
- 私はそれを恋だなんて思ってないけどね。
- このサハラというのが本名にしろ、砂漠にしろ、たいして興味はない。
- 私はいまだに好きな人の本名を知らない。
- 本名なんて、生きていくための記号に過ぎないよ。
- 敷かれた道を歩いたっていい。
- 相手のこと思い出しちゃって、次の日の同じ時間も出かけてた。
- 翌日、翌週、翌月、欲ばかりが増えてくよ。
- 返事かいてたらさ、その人がログインしてきたの。
- 小説を読みふけるのも、書く訓練のひとつだよ。
- まず自分から声かけてみれば。
- 覚えてないなんて、都合のいい言葉だね。
- まったく衰えもしない姿に、鳥肌を覚えてしまった。
- 同じのがすみっこでもぞもぞしてたからさ、ぞっとしちゃったよ。
- 相づちを打ちながら、ぽつぽつと話していた。
- 隔週にいっぺんくらい飲んでたかな。
- 誰だって付き合った当初は新鮮でしょ。
- 当時としちゃ画期的な発明だったね。
- あの頃はよかった、って言うほど生きてないでしょ。
- あの頃の初々しさはどこにいっちまったんだよ。
- 数か月もたつと、興味深さは薄れていった。
- 彼との会話は心地よかった。
- 平穏な日々って、仕事も家賃もないことかい?
- 契約から半年目に差しかかり、別れを意識し始めました。
- 相手から会わないかって言われた。
- 待ち合わせのため、容姿の特徴を伝えた。
- 説明書がないと半額って、下げ過ぎじゃない?
- 友人と好きな人をささやき合った。
- お昼、駅まで迎えに行くよ。
- 最寄駅で降ろしてくださる?
- イメージどおり、三十路くらいの人だったよ。
- なんかもう、くたびれちゃったよ。
- 遠目に若く見えれば充分じゃないか。
- 丸首のシャツばっかり着てるよ。
- 迎えに行ったら、あの人よれっとした長ズボン履いてて。
- すそは長いけど、だらしない感じはしないね。
- 小綺麗な内装は気にいった。
- 別世界の居心地がして、落ち着かなかった。
- 明るいリビングには、暗い表情が並んでいた。
- 私の部屋なら、悠々とお客用のソファーが置いとけるよ。
- つるつるとしたアイボリーのソファーに、腰を下ろした。
- ポテチとグラスを持ってきて、準備はできた。
- 地下の売り場で買ってきた飲みものは、水滴のまだらでいっぱいだった。
- 豆乳と缶チューハイ、好きでしょ。
- 縦長の箱ってこれですか?
- 画面から離れて楽しんでね。
- ここじゃ馴染みのない客だね。
- 紙パックの飲みものがいいな。
- 晴れてるんだから外で干しなよ。
- ぜんぜん乾いてないね。
- 洗剤かえた?
- リサイクルにだってエネルギーを消費するんだよ。
- こいつ、のど渇いてんのか、ごくごく飲んでるね。
- よっぽどおなか空いてたんだね。
- ぬれた手で握手しちった。
- せめてさっと拭いてから渡しとくれよ。
- こっそり隠しても、自分で見つけられないんじゃ意味ないじゃん。
- 見苦しい言い訳はよせよ。
- 上司にこう、すっと差し出しとけばいんだよ。
- 旦那が帰ってきたら、すかさず出すつもり。
- では、手のひらを見せてください。
- 親に見つからないよう、ひたひた歩いてた。
- 嫁さんにも叱られました。
- それはね、枕元に立たれてもおかしくないですよ。
- 猫がささっとまんじゅうを取ってったんだよ。
- あれ近所の人の車ですよ。
- あいさつは大事だよ。
- 母親が小走りでやってきて、財布なくしたって言うんですよ。
- 銀行員は印鑑なんて預かりません。あ、銀行印のことですか。
- やってることがストーカーみたいになってきた。
- きのうも熟睡できなかった。
- 忍び寄って、なにをすればいいの?
- 近寄りがたいというかね、住む世界がちがうんだよ。
- 一気に詰め寄ってお願いすればいいよ。
- そんなに欲しいんなら、息を殺して待ってればいい。
- 焼けたとこ、すんごいじりじりする。
- 知り合いから電話、いまから来るって。
- あんたからならった慣習だよ。
- ハグして、いつもそうするんだ。
- トマトかなんかの赤いソースがかかってるよ。
- でっかいでっかい、ピンクの肉厚なエビ。
- 肉厚なやつ食べたい。
- これ、どう使うの?
- 適当にやって。
- そうそう、腰のところに挟むの。
- いまの、真顔で言ってみて。
- よほど変なことでも言ったんじゃない。
- あの人、くすくす笑ってたよ。
- 猫って虚空みつめてるよね。
- 元カレの名前も思い出せないもん。
- 私の好きなもの、当ててみて。
- さっきから何度も座り直して、どうしたの?
- そうやって指を組み直しても、話は進まないよ。
- 記憶をたどっても無駄っぽいね。
- 言いたくないなら別にいいよ。
- ここまでくると、続きをつむぐのも大変でね。
- 最初っから、そのつもりだったんでしょ。
- ホストに会ってたんです。
- 私は昔からこんな態度だったよ。
- 偏見のない人なんていないよ。
- これぜんぶ、請求書。
- 奥の引き戸、気になってたんだよね。
- そういえば、子供の頃は押しいれで寝てたな。
- 障子に穴あけて怒られたっけな、なつかしい。
- ごみくず片づけて。
- シーツは綿じゃないと。
- 新しい枕と掛け布団があんだ。
- 洗いたてのほうが気持ちいいでしょ?
- 私の曲をカバーするなんて。
- 買ったばかりのカバーなんだぞ。
- 真っ黒な卵ってすごいね。
- おみやげの温泉卵だよ。
- あまった折り紙でなんかできないかな。
- それがサテンのドレス?
- お米、つやっつやだね。
- できたてほやほやだよ。
- 新しいパソコンのおかげで、さくさく進んでるよ。
- かためのパイ生地でどうだろ。
- 人ひとり立てれば充分だよ。
- 今日だけ体を動かしまくってもね。
- タイルはぴかぴか。
- ふだん下着で寝てっから、違和感あるな。
- お言葉に甘えるね。
- カラダがふれる。
- 誠実であろうとはしてるよ。
- この危機的状況、分かっていないのかもしれない。
- 目、さめた?
- 顔に紫外線が当たってる。
- スクランブルエッグは、ケチャップがまぶしてあるもんだと思ってた。
- 他人のペースなんて構わないよ。
- 朝は、ベーコンエッグでご飯かき込んでた。
- トーストにたっぷりバターをつけて、かじる。
- バターがしみてふやける、あの感触が好き。
- やわらかくておいしいね。
- パンくず、こぼさないでね。
- きのうの、ちょっと投げやりだったね。
- まだ寝ぼけてるの?
- きのうの夜、覚えてる?
- なに考えてたっけ。
- 覚えが悪いね。
- 時計の針とれちゃった。
- 直角にかいてみて。
- 夢をえがくのは勝手だけどさ。
- 私に興味しめさないやつを、どうして好きになるってのさ。
- 望みのない誰かに惚れるなんて、ばかばかしいよ。
- あれはあれで楽しかったよ。
- それで良し。
- 深夜にドライブってのも悪くないね。
- ゲームのプレイ動画みてた。
- アプリから通知きてなかった?
- お礼やら何やら言ってたよ。
- ひと言ふた言あるでしょ、なんか。
- 通話するの、何日ぶりだろ。
- ほら、うっすら笑ってる。
- べつに、軽く話しただけ。
- 夜明け前にお開きにしたよ。
- 私の役目も終わりかな。
- やりがいがひとつ無くなったって感じ。
- 会話の回数が減ってくのは、やっぱさみしいよ。
- 自然消滅することは目に見えてるじゃん。
- 誘われれば、そりゃうれしいけどさ。
- なにも感じないってなら、それまでなんじゃない。